▼令和4年 条例予算特別委員会 篠原 達也 総会質疑 (令和4年3月22日)

◯篠原委員 公明党福岡市議団を代表して、スマート農業の推進について、高齢者にも優しいデジタル社会の実現について質問する。日本の農業の現場では、依然として人手に頼る作業や熟練者でなければできない作業が多く、省力化、人手の確保、負担の軽減が重要な課題となっている。本市農業の現状と課題認識について尋ねる。初めに、本市の農業従事者数について、5年前と現在の状況を示されたい。

△農林水産局長 福岡市農林水産統計書に基づき答えると、5年前の平成27年が3,543人、直近の令和2年が2,580人である。

◯篠原委員 本市の農業従事者は、この5年間、およそ毎年200人ずつのペースで減少している。本市の農家の経営主の平均年齢について、5年前と現在の状況、また、現在の農業従事者の年齢構成について示されたい。

△農林水産局長 農家の経営主の平均年齢は、JA福岡市が実施した調査結果によると、5年前の平成27年度が70.8歳、直近の令和2年度が72.6歳である。また、2年度の年齢構成については、国が実施した農林業センサスによると、60代が655人と一番多く、次に多いのが70代で527人となっている。

◯篠原委員 若い世代、現在の50歳未満の農業従事者数を尋ねる。あわせて、新規就農者数の過去5年間の推移についても示されたい。

△農林水産局長 まず、50歳未満の農業従事者数については、直近の令和2年が621人で、市全体の農業従事者総数に占める割合は24.1%となっている。また、新規就農者数の過去5年間の推移については、平成28年度が16人、29年度が18人、30年度が21人、令和元年度が20人、2年度が28人となっている。

◯篠原委員 農業従事者の年齢構成を見ると、特に将来を担う50歳未満の農業経営主が少ないようである。また、新規就農者数も、この5年間一生懸命取り組んだ成果として着実に増加しているようだが、農業従事者が毎年200人ずつ減少している状況を踏まえると、もっと増やしていくための取組が必要ではないかと思われる。令和4年度、国において、農業への人材の一層の呼び込みと定着を図るため、新規就農者を対象とした支援施策が強化され、これまでの営農資金として年間150万円支給する制度に加え、新たに機械や施設等の導入費用を支援する制度も創設されるようである。こうした国の支援制度もしっかり活用しながら、本市における新規就農者の確保、育成により一層力を入れて取り組んでもらいたいと考えている。とはいえ、新規就農者の確保、育成には一定の期間が必要である。まずは、現在の農業従事者の下、直面する担い手の減少と高齢化にどう対応していくか、このことが喫緊の課題である。そこで、担い手の減少、高齢化が進むと、具体的にどのような課題が生じるのか尋ねる。

△農林水産局長 担い手の減少や高齢化が進み、人手不足が顕著になると、農産物の安定的な生産や出荷に支障が生じ、農地の維持が困難となる。その結果、市民への市内産農産物の供給が減少するとともに、耕作放棄地が増加し、生産基盤の脆弱化と農村地域の活力の低下を招くことが懸念される。

◯篠原委員 本市は持続できる強い農業を推進していくために、生産性の向上や規模拡大を図る意欲のある担い手の支援や、多様な担い手の確保と育成を行うとともに、農業の生産基盤を整備し、農地の保全や農業用施設の維持、活用を図り、さらに生産現場における環境負荷低減に向けた取組に努めることが求められている。担い手の減少、高齢化など農業をめぐる課題の打開策として期待される、日本の農業技術に先端技術を駆使したスマート農業とはどのようなものか尋ねる。

△農林水産局長 スマート農業とはロボット、AI、IoTなどの先端技術を活用して、省力化や精密化、高品質生産を実現する新たな農業のことである。現在の農業は依然として人手に頼る作業が多いことから、スマート農業を導入し最新のテクノロジーを活用することにより、生産現場で生じている様々な課題を解決することが期待されている。

◯篠原委員 先端技術を駆使したスマート農業の導入は、日々の農作業にどのような変化をもたらすと考えているのか。

△農林水産局長 国の資料によると、スマート農業の導入効果として、作業の自動化による農作業の時間短縮や労働負担の軽減、情報共有の簡易化による新規就農者の確保や栽培技術力の継承、データ活用による効率的な農業経営の確立などが挙げられている。

◯篠原委員 スマート農業に期待される効果として、農業分野におけるICT機器やサービスを利用することにより、経営内容の見える化、作業履歴の記録、管理が可能になる。それでは、本市のスマート農業導入促進に向けたアグリDXプロジェクト(実証実験)の取組について説明されたい。

△農林水産局長 本市では令和元年度より、産地の課題解決につながるAI、IoT等を活用したスマート農業の実証実験の取組を始めている。これまでに、イチゴやバラ農家などの農業用ハウス内に環境制御システムを設置し、適切な水と肥料の自動供給や遠隔操作による温度、湿度の調整など、農作業の省力化、効率化を図るとともに、生産者グループ内でのデータ共有による生産性向上の検証に取り組んできた。また、3年度は、新たに農業用ドローンの活用に取り組んでおり、早良区、西区の農地にて、農薬、肥料の散布を試験的に行っている。

◯篠原委員 アグリDXプロジェクト(実証実験)の取組によって、どのような成果があったか示されたい。また、農業用ドローンの活用も試験的に行っているようだが、農業従事者には高齢者も多く、こうした新しい機器の操作技術を習得し使いこなしていくことは大変ではないかと思われる。どのように普及させていくつもりなのか、考えを示されたい。

△農林水産局長 まず、これまでの取組の成果について、環境制御システムの活用については、実証実験の結果、労働時間の削減や収量の増が見込まれることが確認されている。また、農業用ドローンの活用についても、農薬、肥料の散布に要した時間が従来の10分の1程度となるなど、労働時間削減の効果が見込まれることが確認されている。一方、農業用ドローンの活用については、指摘のとおり、技術面で導入の難しさがあると認識している。このため、操作する技術を習得しやすい若手の農業従事者がまず導入し、地域の中核となって、農薬散布などの作業を請け負うというような仕組みを構築することで、地域の中で農業用ドローンの活用を普及させていくことを想定している。

◯篠原委員 農業用ドローンにおいて、必要な時期に必要な量の農薬や肥料を効果的に散布する試みが行われているとのことだが、中山間地域など作業性が悪い場所でも、短時間で正確な場所への種まきが可能になり、手作業で行っていた受粉を空中からの散布などにより省略化できる。さらに、収穫した農作物や農業資材などの運搬、画像分析などで、葉の色や虫のつき方などをチェックして、生育状況や病害虫の発生などを可視化できる。その結果として、農薬や肥料の使用を少なくすることもでき、従来よりも高品質でコストを抑えた農作業も可能になる。スマート農業の課題であるコストの低減化については、産地単位での機材やデータの共同利用、作業の集約化を図ることで、導入コストを最低限に抑えられる。スマート農業技術を生産性向上、収益性向上等の経営高度化の実現に向けた一つの手法、戦略と位置づけ、技術を導入したことにより、便利になったがコストがかさむようでは意味がない。スマート農業が普及することで、農家の仕事がなくなる、農家が考えなくなる、また、ロボットに取って代わられるなどという心配をする人もいるだろう。しかし、スマート農業は、従来の農作業にかかる負担を大きく省力化してくれる切り札である。スマート農業の導入は生産者に様々な効果をもたらすことから、もっと市内生産者に広げていく必要があると考えるが、所見を尋ねる。

△農林水産局長 スマート農業を市内生産者に広げていくためには、その導入効果について広く情報発信していく必要があると考えている。これまでに、生産者、県、大学と連携し、実証実験に参加したイチゴ農家の圃場データを活用した生産技術の改善、向上に向けた検討会を開催することで、生産者グループ内で環境制御システムを活用した栽培について、情報の共有を図っている。また、新型コロナウイルス感染症に対応した情報発信の一環として、市内生産者向けに導入メリットをPRする動画を作成し、本市のユーチューブチャンネルにて配信している。そういった取組の結果、スマート農業の取組スタートから2か年で、イチゴ農家で8戸、トマト農家で6戸、トータルで14戸の農家で環境制御システムの導入が進み、実証実験へ参加した農家以外にも活用が広がっているところである。

◯篠原委員 導入促進に向けて、今後必要な取組として事例を紹介する。埼玉県深谷市でイチゴの観光農園を営む(株)いちご畑のビニールハウスには、真っ赤に実ったあまりんの甘い香りが漂っている。県内農家のみ栽培が許される品種で、幻のイチゴと呼ばれている。社長の高荷さんは「全国に勝負できる自慢のイチゴ。栽培に手間はかかるが、スマート農業の導入で作業の負担が軽くなり、作業時間は確実に減った」と言っている。ハウス内には6台の固定カメラがあり、天井からイチゴ狩り客が通った軌跡を記録。AIでイチゴが残っている場所を素早く特定し、従業員による客の円滑な場内誘導や3密の回避につなげている。今後は、高速で大容量の通信ができるローカル5Gを駆使し、カメラを搭載した自走式ロボットも本格運用する。また、山梨市ではプロジェクトとして、ブドウ栽培に農家と産官学が連携し、シャインマスカット栽培の実験をしている。ブドウ栽培には、生育が悪い小さな粒を取り除き、きれいな房をつくる摘粒の作業が欠かせない。見極めには熟練の技術が必要だが、眼鏡型の機械、スマートグラスを装着すると、AIとARにより、視界に取り除くべき粒が色つきで表示される。「スマートグラスを2日間使って慣れれば、未経験者でもたくみの技の水準に到達できる。農家の作業時間も5割程度削減できた」と言う。このような取組も本市で取り入れてはどうか、所見を尋ねる。

△農林水産局長 提案のあったスマートグラスなどの先端技術については、どのようなものかしっかり把握し、農家の意見を聞きながら、本市の生産現場の現状やニーズにうまく適合するものがあれば、その活用について検討していきたい。

◯篠原委員 導入費用をどのように調達するかという課題はあるが、活用することによって、経営の改善や農作業にかかる時間の短縮などメリットも多いと言える。スマート農業で省力化できた時間は、人でしかできない作業、農業経営の意思決定などに割り当てることで、経営の強化が期待できる。単純な労働時間の削減効果以外にも、熟練者と非熟練者にも同様の作業を可能にすることで、就農者の幅を広げる効果もあるのではと思う。今は、従来の農業からスマート農業を取り入れていく過渡期でもあると思うが、課題である導入費用の負担について、生産者の負担軽減に向け、市独自の支援策を設けるべきと考えるが、所見を尋ねる。

△農林水産局長 スマート農業の導入には一定の費用負担が必要で、生産者がその導入を判断するに当たっては、導入効果が明らかであることのほか、導入費用に対する支援策の有無が重要な判断材料となると認識している。一方で、既存の国や県の支援制度については、大規模農家を対象としているものが多いのが実情である。そのため、小規模な農家が中心である本市に対応した支援策が必要であると考え、令和4年度に新たに市独自の導入支援制度として、未来へつなげる農村の担い手支援事業を創設することとしている。この制度を活用することで、作業受託や集落営農などに取り組む地域の担い手を対象に、スマート農業の導入を推進していく。

◯篠原委員 今、答弁があった新たな市独自の支援策である、未来へつなげる農村の担い手支援事業だが、資金面で導入をちゅうちょしている農家への大変強い後押しになるのではないかと期待している。ぜひ、その制度について市内生産者へ広く周知し、スマート農業の導入を進めてもらいたいと思う。さて、福岡県はあまおうに代表されるブランドイチゴの生産に力を入れているが、先日、「イチゴ産出額、福岡、幻の1位に、首位はやっぱり栃木」という新聞記事を見た。農林水産省は昨年12月に農業産出額の統計を公表したが、誤りがあり、イチゴの産出額において全国1位だった福岡県と2位の栃木県の順位が入れ替わるというもので、とても残念に思った。栃木県のとちおとめと福岡県のあまおうは、東西の横綱産地として知られている。福岡県の担当者は「産出額より重要なのは、販売単価。農家の収入向上につながるブランド化を今後も続けていく」と話しているとのことだった。本市のあまおうを生産しているイチゴ農家では、環境制御システムの導入が進んでいると聞いている。そのようにスマート農業技術を活用し、さらに高品質化を図り、あまおうのブランド力向上につながればと思う。本市はどのような農業を目指していくのか。スマート農業の導入により、農作業の省力化、軽労化をさらに進めることができるとともに、新規就農者の確保や栽培技術力の継承が期待される。ここで、本市の令和4年度の新技術の活用に向けた取組について尋ねる。

△農林水産局長 令和4年度の新技術活用に向けた取組として、特に中山間地域などで高齢の農業従事者にとって、除草作業が大変な負担となっていると聞いており、重労働である除草作業の負担軽減につながる除草ロボット活用について、実証実験を進めていきたいと考えている。

◯篠原委員 農業に関わる業務の見える化をすることは、とても重要である。例えば、誰がどこで、どのような作業を、どれだけ行ったかといった情報を管理して見える化することで、栽培時のリスク管理ができるだけでなく、出てきた課題に対して改善を行うことで、さらなる効率化が図れる。優れた農業生産者の農業技術は、後継者不足により途絶えてしまうのではないかと心配される農業の抱える課題の一つだが、スマート農業を実践し、熟練の農業技術をAIに学習させる、農作業の自動化作業に組み込むなどすることにより、貴重な農業技術をスムーズに後世に継承していくことができる。例えば、従来は、毎日、田畑の様子を見に行き、害虫や、葉、果実の生育具合、色の具合を見て成長を判断していたが、農薬散布や追肥などが自動化されると、農作業に携わらなくてもよい時間が増え、その分、日々の作業に追われてできなかった経営判断や従業員の教育などに力を入れることができるようになる。これにより、農作業そのものの業務改善を行うことができ、働き方を大きく変えることが可能になる。また、トラクターや田植機などの導入で、農作業を劇的に効率化できることもスマート農業のメリットである。自動運転の農機具と農業用ドローンを組み合わせると、より広い範囲の農作業が効率よくできるようになる。農作業の効率化により、広範囲の作付が可能になれば、農家1戸当たりの生産量を引き上げることができる。その結果、国内の食料自給率の向上にも貢献できる。つまり、スマート農業の導入により、農作業が省力化できるため、農家の負担軽減になる点も大きなメリットと言える。例えば、体力を使う重労働が大きく減少するため、高齢になっても農業に携わることが可能になる。これまで体力的な問題で農業を諦めていた人も参加できるようになり、農業に参入する人が増えてくるといった期待もできる。最初に述べたが、本市にとって、担い手の減少と高齢化への対応は、まさに喫緊の課題である。スマート農業の導入は、こうした課題を解消するだけでなく、新しい農業の在り方をつくり出す大きな可能性を秘めており、ぜひとも推進すべきと考える。そこで、本市の今後のスマート農業推進に対する決意を尋ねる。

△農林水産局長 スマート農業については、生産現場での導入が進むことにより、農作業の時間短縮や負担軽減が図られ、女性の就農や高齢農家の経営継続が可能となることや、新たなテクノロジーの活用により、生産性や所得の向上が図られ、若者など次世代の担い手確保につながることが期待される。このため、導入促進に向けた取組として、令和4年度は、新たに導入支援制度を創設し、地域の農業を支えるため、農業用ドローンなどスマート農業技術の活用に意欲を示す生産者に対して、導入費用の助成を行っていく。また、小規模農家が中心である本市の実情に合わせた技術の導入が重要であると考えており、今後とも、実証しながらスマート農業の手法を把握し、費用対効果を見極めながら、本市の農業に合った多様な先端技術を生産者へ広げていく。

◯篠原委員 今、局長から前向きな大変力強い答弁があった。先ほどから述べているが、農業の担い手が減少し高齢化も進む中、スマート農業の普及促進は必要不可欠であり、今後大きな役割を果たすものと確信している。この質問の最後に、スマート農業の推進も含めて、本市農業の将来像について、市長の所見を尋ねる。

△市長 本市は人口160万人を超える大都市でありながら、充実した都市機能と豊かな自然環境が近接したコンパクトな都市であり、その中で農業は、食べ物がおいしく、自然が近いという本市の魅力を支える大きな役割を果たしていると認識している。一方、本市の農業を取り巻く環境は依然として厳しく、農業従事者の高齢化や担い手不足などによる農地の減少、耕作放棄地の顕在化など様々な課題を抱えている。また、SDGsや環境を重視する国内外の動きが加速化しており、国においては、令和3年5月にみどりの食料システム戦略が策定され、イノベーションによる持続可能な食料システムの構築が急務となっている。こうした中、スマート農業の導入は、農家の負担を軽減し、生産性や収益性の向上を図るだけでなく、農業技術の見える化による栽培管理の最適化、技術の継承、品質の向上や安全性確保をもたらすことが期待され、これからの農業の在り方を大きく変えていく力を持っているものと認識している。令和4年度から、新たな福岡市農林業総合計画をスタートさせるが、大学等と連携しスマート農業を積極的に推進することで、新たな時代に的確に対応した持続可能な力強い農業を実現し、30年後の本市農業の目指す姿である、食べ物がおいしいまちを支え、農とともにある豊かな暮らしの実現を図っていく。

◯篠原委員 次に、高齢者にも優しいデジタル社会の実現についてである。2030年までに世界が取り組んでいる持続可能な目標、SDGsの17の目標の10番目に、人や国の不平等をなくそうとうたっている。デジタル化が急速に進む現代社会において、高齢者がスマートフォンやインターネットを使いこなせないことが、個人の利益や暮らしの質、命にまで関わる大きな問題となっている。今、国を挙げて、デジタルの活用により、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を目指している。デジタルを積極的に活用した高齢者施策が重要である。デジタルと高齢者に関する取組の現状と今後の展望について質問していく。まず初めに、本市の65歳以上の高齢者数と高齢化率を尋ねる。あわせて、2040年の推計が分かれば示されたい。

△総務企画局長 令和2年の国勢調査の結果によると、本市における高齢者数は33万8,930人で、高齢化率は22.1%となっている。また、平成24年に行った本市の将来人口推計によると、2040年の高齢者数は約49万7,000人で、高齢化率は31.0%となっている。

◯篠原委員 既に本市は超高齢社会を迎えており、今後もその率は着実に増えていくとのことである。振り返ってみると、2010年代にスマートフォンの普及が急拡大し、その後も通信速度やデータ容量、カメラ機能など高機能化が進み、僅か10年ほどではあるが、我々の生活の中にスマートフォンが浸透してきている状況である。そこで、高齢者のスマートフォンの保有状況を尋ねる。

△総務企画局長 総務省が令和2年9月に実施した通信利用動向調査によると、全国における60代の保有率は67.4%、70代は38.3%、80代以上は11.0%となっている。

◯篠原委員 デジタル社会を形成する上で、スマートフォンは重要なツールだと思っている。スマートフォンを持っていれば、生活や趣味、防災情報などの取得、無料通話アプリなどを通じた友人とのコミュニケーションなどが可能だが、高齢者には十分行き渡っていないのが現状である。昨年、我が会派の古川議員が12月議会でも触れたが、東京都渋谷区の取組を紹介する。高齢者に対して、デジタル機器の利用促進を図り、情報の格差を解消し、健康増進及び安心、安全の確保につなげ、生活の質の向上を目指すことを目的に、区内に住所を有する65歳以上で、スマートフォンを保有していない人3,000人を区が募集し、現在、約1,700人に2年間無料でスマートフォンを貸与する事業を行っている。活用支援については、講習会を区内6会場で4回、入門編、初級編、中級編、個別相談会の実施や、区がコールセンターを開設し、無料のフリーコール、遠隔操作によるサポートなど、無料貸与後のフォローもしっかり取り組んでいる。一方では、これだけの事業であるため、予算額は3億6,500万円と聞いており、当然、費用対効果が求められ、多くの市民の理解も必要と思う。参加をした77歳の男性は「いろんなことができると感動した。日々の楽しみが何倍も増えた」と喜んでいる。また、最高齢の101歳の女性は「まだ全然分からないことばかり。でも90歳の人だってできているんだから、私でもできたらいいなと思って。スマートフォンは普通の電話よりずっといい。すばらしいです。今はなかなか人に会うことができないから、健康でいるのをお互いに確かめ合えたら、ありがたいと思いますね。しっかり覚えます」と、息子とLINE、ビデオ通話をしているとのことである。高齢者がスマートフォンを手にしたことを契機に刺激を受け、前向きに動こうとする好事例ではないだろうか。こうした渋谷区の取組を参考にして、本市でもスマートフォンの無料貸与について検討できないか尋ねる。

△総務企画局長 渋谷区の取組については、高齢者のデジタル機器の利用促進等の観点からは、効果的な取組となるのではないかと考えている。一方で、その実現のためには、課題や費用対効果など様々な観点から慎重な検討が必要と認識している。現在、福岡市社会福祉協議会において、高齢者の見守りや交流の機会を増やすことを目的に、希望する高齢者にタブレット端末を貸与し、簡単にグループ内でビデオ通話ができる見守り交流アプリを使用した実証の取組が進められており、オンライン上で高齢者による活発な交流が行われていると保健福祉局から聞いている。このような取組や、指摘の事例も含め、様々な手法により、高齢者にも優しいデジタル社会の実現を図れるよう、総務企画局としても各局等の取組を積極的に支援していく。

◯篠原委員 渋谷区の貸し出すスマートフォンには、区から暮らしや災害の情報を受け取れる通信アプリ、LINEや防災アプリ、オンライン診療を受けるためのビデオ会議システム、Zoomなどがダウンロードされており、通信料や通話料は区が負担する。さらにいつでも問合せできるよう、専用コールセンターを設けている。区の担当者は「2年後、スマートフォンを使うのが楽しかった、災害時に役立ったと言ってもらえるよう、しっかりサポートしていく」と強調している。スマートフォンなどのデジタル機器を活用する取組が、生活の質を高める大きな要素になると思われるが、所見を尋ねる。

△総務企画局長 デジタル機器を活用する取組については、行政手続のオンライン化を推進することで、市民がスマートフォンで自宅や外出先から、いつでも簡単にオンライン申請等ができるなど利便性が向上するとともに、区役所等に来庁する必要がないことから、新型コロナウイルス感染症の拡大防止にも有効と考えている。また、業務の効率化、生産性を高めることにより、相談業務など人にしかできない業務に人員を再配置することで、デジタルへの対応が困難な来庁者に対しても、より丁寧に対応できると考えている。これらの取組を進めることにより、市民の利便性向上や業務の効率化等が実現され、市民生活の質の向上に寄与するものと考えている。

◯篠原委員 東京都も都内の高齢者向け通信事業者等と連携したモデル事業を始めた。その内容は、まず、スマートフォンの操作方法などの利用教室を750回程度開催し、利用教室に参加し利用してみたいと意欲が湧いた高齢者にスマートフォンを1か月程度、延べ1,500台程度の貸出しを実施、また、日常の困り事に対して、身近な場所でアウトリーチ型の相談会を200回程度実施するものである。これらを実施し、相談会などから得られたデータを基に、官民連携による仕組みづくりを検討しているとのことである。また、今後はデジタルの力でコミュニティ維持ができる仕組みづくりを区市町村とともに検証していくとのことである。都の担当者は「コロナでデジタル化は必然となった。そこから、誰一人取り残さないようにしたい」と話している。また、高齢者のスマートフォン教室でよくある実例として「QRコードつきの情報チラシにスマートフォンをかざして、情報を取得してください」と言うと、多くの人がカメラで撮影して「はい、撮れました」と言うそうである。高齢者向けの教室については、高齢者が操作方法等をしっかり学んでいけるようなカリキュラムや仕組みづくりも必要である。高齢者がスマートフォンを手にするようになると、次に、その使用に当たって、インターネットをめぐる様々なトラブルに巻き込まれることが一番の不安材料になってくる。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、高齢者がインターネットを利用して商品を購入したり、サービスを受けたりする機会も増えてきていると思う。そこで、消費生活センターにおける令和2年度の高齢者からの相談件数、そのうちインターネット利用による商品やサービスなどの消費者トラブルに関する相談件数や相談内容について尋ねる。

△市民局長 令和2年度の65歳以上の高齢者からの相談件数については3,243件で、そのうちインターネット利用による消費者トラブルの相談件数は848件となっている。主な相談内容は、利用した覚えのない有料サイトからの請求や、大手事業者をかたる不在通知などの不審メール、サプリメントの定期購入などに関するものである。

◯篠原委員 インターネット通販で1回限りの契約だと思い購入したら、定期購入の契約になっていて高額を請求された、ネットショップ自体が架空で商品が届かなかったなどのトラブルが増加している。また、パソコン操作中に突然、偽の警告画面が表示され、慌てて連絡すると高額なメンテナンス費用を請求される詐欺など、パソコン操作に不慣れな高齢者がターゲットになりやすい傾向がある。そうしたトラブルが、高齢者のデジタルへのハードルを上げる要因になっているのではないかと思われるため、その対策が重要であると指摘しておく。高齢者にとって、スマートフォンの画面に表示される文字が小さく読み取りにくいといった話はよく聞く。また、サイト画面のデザインが分かりにくい、配色が見えにくいなどのケースもある。高齢者が利用しやすいよう配慮された文字サイズやデザイン、配色などであれば、誰にとっても優しいサービスになると思う。そこで、デジタルにもユニバーサルデザインを取り入れることで、高齢者にとっても分かりやすく使いやすい環境となると考えるが、所見を尋ねる。

△総務企画局長 ユニバーサルデザインについては、例えば、本市ホームページでは、高齢者を含む、利用する全ての人が心身の機能や利用する環境に関係なく、ホームページで提供されている情報やサービスを利用できるよう、ユニバーサルデザインの理念に通じるウェブアクセシビリティの方針を策定の上、その方針に基づき運営しているところである。また、行政手続のオンライン化に当たっては、ユニバーサルデザインの理念も踏まえ、誰もが使いやすく分かりやすいユーザーインターフェースの導入や仕組みづくりを進めるとともに、スマートフォンでも見やすく、シンプルで入力しやすい画面のデザインなどの工夫を行っており、例えば、高齢者乗車券の申請の利用者からは「分かりやすく申請が簡単に済んだ」「思ったよりスムーズにできた」などの声をもらうなど好評を得ている。

◯篠原委員 今後、ますます多くの高齢者がスマートフォンを持つようになる。安心して使いこなすことができるよう、市の支援が必要であると指摘しておく。市では、デジタルの活用に不安がある高齢者等への支援として、リモート窓口の実証実験をしていると聞いている。そこで、実証実験の概要と現在の取組状況を尋ねる。

△総務企画局長 リモート窓口については、公民館などの市民の身近な場所にビデオ通話が可能な機器を設置することで、市民が区役所等に出かけることなく、遠隔での手続や相談を可能とする実証実験を昨年12月から開始している。令和4年2月末時点で、農山漁村地域や離島の公民館7か所にて、地域の人に実際に操作を体験してもらうなどの体験会等を31回実施し、合計で169人に参加してもらっている。参加者からは「簡単に利用できた」「こういう窓口ができれば利用したい」などの意見をもらっている。

◯篠原委員 リモート窓口の運用を図っていく上では、参加者の声も踏まえて改善されたい。そこで、令和4年度はどのような取組を行うのか尋ねる。あわせて、実施箇所も増やすべきと考えるが、所見を尋ねる。

△総務企画局長 令和4年度の取組については、引き続き実証実験に取り組むこととしており、予算額は1,000万円となっている。実施に当たっては、3年度の実証の結果等も踏まえ、高齢者にもさらに使いやすく分かりやすくなるよう、システムや運用方法などを改善していく。また、実施箇所の拡充については、地域の意見や要望等を踏まえながら検討していく。

◯篠原委員 スマートフォンなどのデジタル機器の扱いが苦手な高齢者は、従来であれば時間をかけて区役所へ出かける必要があったと思うが、そういう人にこそリモート窓口は最良のサービスであり、まさにデジタルを活用した、人に優しいサービスだと思う。しっかりと進められたい。デジタルが社会のインフラの一つとなり、生活の隅々まで浸透し、電子マネーも普及し、医療関係の予約やチケットの申込みでもオンライン手続が増えてきた。回覧板の代わりにメールで情報を流す自治会もある。しかし、使い方が分からないため、スマートフォンなどを持っていないという高齢者が多く存在するのも事実である。最後に、高齢者にも優しいデジタル社会の実現に向けて、市長の決意を尋ねる。

△市長 今後、人口減少や少子高齢化が進んでいく中で、多様化する市民ニーズに丁寧に対応し、よりきめ細かな行政サービスを提供していくため、飛躍的に進化するデジタル技術が果たす役割は非常に大きいと考えており、現在、行政手続のオンライン化などのDXの取組を進めているところである。この取組を進めていくに当たっては、デジタルに不慣れで対応が困難な高齢者などにしっかりと寄り添いながら、子どもから高齢者まで、誰もがデジタル技術を活用できる環境づくりを進めていくことが重要であると考えている。本市においては、今後とも、DXの取組を積極的に推進し、業務の効率化により生じる人的資源を人のぬくもりが必要な分野に配置するなど、これからの時代にふさわしい行政サービスの提供を進め、高齢者をはじめ、誰一人取り残されないデジタル社会の実現に向けて取り組んでいく。

 

議員紹介

  1. つつみ 健太郎

    西 区

    つつみ 健太郎
  2. たばる 香代子

    中央区

    たばる 香代子
  3. たのかしら 知行

    博多区

    たのかしら 知行
  4. 石本 優子

    早良区

    石本 優子
  5. かつやま 信吾

    東 区

    かつやま 信吾
  6. 古川 きよふみ

    博多区

    古川 きよふみ
  7. 高木 勝利

    早良区

    高木 勝利
  8. しのはら 達也

    城南区

    しのはら 達也
  9. 尾花 康広

    東 区

    尾花 康広
  10. 松野 たかし

    南 区

    松野 たかし
  11. 山口 つよし

    東 区

    山口 つよし
  12. 大石 しゅうじ

    南 区

    大石 しゅうじ
PAGE TOP