◆令和元年平成30年度決算特別委員会 高木 勝利 総会質疑 (令和元年10月4日)

◯高木委員 公明党福岡市議団を代表して、交通安全運転対策について、障害者手帳等保持者への配慮について質問する。まず交通安全運転対策についてである。ことし6月4日、早良口交差点で81歳男性が運転する車による重大事故発生のニュースが飛び込んできた。テレビ報道で運転者の名前が明らかになり耳を疑った。この人は地元校区で自治会長を務めるなど、ふだんから地域からの相談や地域課題の解決のために尽くしてきた人だった。ここで改めて負傷された7人の皆様に心からお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた会長と民生委員として活躍していた奥様のこれまでの功績に敬意を表し、心から冥福をお祈りする。このこともきっかけとなり、痛ましい交通事故が1件でも減るように本市として何ができるのか真剣に考える必要があるとの思いに至り、質問のテーマにした。まず初めに、高齢者の安全運転に関する施策の平成30年度の決算額と過去4年間の推移と取り組み内容を尋ねる。

◯市民局長 高齢者の安全運転に関する施策については、交通安全教育及び啓発推進事業の中で実施しており、過去5年間の決算額は平成26年度が2,052万円余、27年度が2,153万円余、28年度が2,027万円余、29年度が2,003万円余、30年度が2,052万円余となっている。取り組み内容については、高齢者自身が加齢に伴う身体機能や判断能力の変化に気づくことで、安全運転に心がけてもらえるよう認知症予防講座と実技運転を組み合わせた高齢運転者講習や運転操作のスキルアップを図る駐車教室を開催するとともに、四季の交通安全運動の街頭キャンペーンなどにおいて安全運転に関する広報、啓発を行っている。

◯高木委員 交通安全白書では1989年に109万人だった70歳以上の運転免許保有者は、30年後の2018年には1,130万人と10倍になり、高齢社会白書では80歳以上の高齢者の26.4%が外出時に自分で運転し、そのうち週2回以上運転している人が90.2%にも上るとされている。市内の70歳以上の運転免許保有者数について、平成30年及び過去4年の状況を尋ねる。

◯市民局長 平成26年が6万5,257人、27年が6万6,559人、28年が6万9,392人、29年が7万5,751人、30年が8万2,987人となっている。

◯高木委員 70歳以上の運転免許保有者数は年々増加している。警察庁の資料によると、2018年の75歳以上の高齢運転者による死亡事故は460件、このうちブレーキとアクセルの踏み間違いなど操作ミスによる死亡事故が136件と最も多くなっている。警察庁の一昨年の年齢層別免許人口10万人当たりの死亡事故件数は、70~74歳の3.4人に対し、75~79歳では6.1人、80~84歳では9.1人、85歳以上になると15.1人と急激にふえていることがわかる。原付免許も含めて16~74歳未満の平均3.4人に対し、75歳以上の5歳以上の3つの区切りでは8.0人で倍以上多いことがわかる。ブレーキとアクセルの踏み間違いは余り年齢に関係なく、高齢者に多いのは間違って踏んだことを素早く認知してブレーキを踏めないためであり、認知機能の低下により動作や思考が緩慢になることなどが指摘されている。本市では先月、南区の運転免許試験場内でシミュレーターによる実技体験なども取り入れた高齢運転者講習会を実施されたが、概要や目的を尋ねる。さらに頻度を増して継続されたいが、今後の方針を尋ねる。

◯市民局長 シミュレーターによる実技体験を取り入れた高齢運転者講習については、高齢者がかかわる重大事故が社会問題となる中、加齢に伴う身体機能や判断能力の変化に気づき、安全運転に心がける機会の拡充を目的として開催したものであり、おおむね65歳以上の高齢運転者及びその家族を対象に危険予測トレーニングなどのシミュレーターを活用し、道路に潜むさまざまな危険を疑似体験できる講習内容となっている。今後とも、高齢運転者講習など高齢者自身が安全運転を心がける機会のさらなる充実を図っていく。

◯高木委員 昨今、高齢運転者による事故がふえていることもあり、運転免許自主返納者が全国的にもふえている。そこで、本市の65歳以上の高齢者の運転免許自主返納者数について、過去3年間の推移を尋ねる。

◯市民局長 福岡県警が平成29年から集計しており、29年は3,565件、30年は3,527件、令和元年は6月末時点で2,387件となっている。

◯高木委員 運転免許自主返納者に対して、効果的な支援方法などの検討を進める必要がある。本市では65歳以上の運転免許返納者への特典で、地下鉄のちかパス65に最大6,000ポイントを付与する取り組みを実施しているが、開始年度からの利用人数の推移と付与されたポイントの額について尋ねる。

◯交通事業管理者 サービスを開始した平成29年度は5月初旬から3月までの約11カ月で利用人数が91人、付与したポイントが47万1,000円分、30年度は利用人数が71人、ポイントが33万3,000円分、元年度は8月末までの5カ月で利用人数が38人、ポイントが15万3,000円分となっている。

◯高木委員 運転免許返納者数から考えれば、まだ利用者数が少ないと感じる。このほかにも市民が利用しやすい免許返納者への特典で、交通事業者独自の取り組みとして西鉄路線バスのグランドパス65を購入する際に1,000円割引になることや、運転経歴証明書の提示によりタクシー料金が10%割引されることなども実施されている。しかし、運転免許返納者に対するこれらの特典などは余り知られておらず、大変わかりにくいとの声を聞いており、市ホームページや市政だよりなどで高齢者にもわかりやすい広報を早急に進められたいが、所見を尋ねる。

◯市民局長 運転免許証の自主返納者を対象とした支援サービスについては、高齢者を対象とした交通安全の出前講座など、さまざまな機会を捉えて周知に努めているところであり、今後とも市ホームページや市政だよりなどを活用しながら、高齢者にもよりわかりやすい広報に取り組んでいく。

◯高木委員 持病があるなど40歳代で運転免許を自主返納した人もいるが、高齢者だけではなく、今後これらの人へも何らかの特典を検討するよう要望しておく。経済産業省では免許自主返納者に対して電動車椅子の購入助成なども検討しているほか、東京都では返納後の公共交通の充実を図るため先端技術を活用した自動運転バスを八丈島で、電動車椅子を多摩ニュータウンで、それぞれ実証実験を始めている。さらに、運転免許返納者への交通機関のICカード、タクシー券などは一過性で使えなくなることもあり、運転する目的として一番多い買い物に視点を当て、例えば買い物に行った際に商店街やスーパーなどの事業者に協力を依頼し、無料配送してくれる店舗をふやすことなどの取り組みも始まった。運転する目的で一番多い買い物に視点を当てた、事業者に協力してもらう仕組みづくりをさらに進めてほしいと考えるが、所見を尋ねる。

◯保健福祉局長 買い物の支援については、元年度より食料品、日用品の移動販売や宅配、買い物代行など、買い物支援に協力してもらえる企業等の登録制度を創設し、地域の特性やニーズに応じて地域と登録企業等をマッチングする取り組みを開始している。また、宅配などを行う商店の情報を区ごとにまとめた買い物支援ガイドブックを市社会福祉協議会において作成し、高齢者等に配布するなど、買い物支援に協力する商店等と個人をつなぐ取り組みも行っている。今後とも地域の特性やニーズに応じた買い物支援が行えるよう、多様で持続可能な仕組みづくりに取り組んでいく。

◯高木委員 ことし4月には豊島区池袋で87歳の男性が運転する車が暴走し、次々と通行人をはね、母子2人が亡くなり男女8人が重軽傷を負う痛ましい事故が発生した。東京都はこの事故もきっかけとなり、7月31日から都内在住の70歳以上のドライバーを対象に、後づけする自動車の急発進防止装置の設置費用を9割補助する事業を開始した。先日、豊島区から話を聞いてきたが、事故が発生した豊島区は亡くなった母子2人の慰霊碑建立とともに、東京都と同時に残り1割についても補助を開始したので、実質自己負担なしで設置ができる。何としても1件でも痛ましい事故を減らすという都知事、豊島区長の即決はすばらしいと思う。さらに香川県などでは、サポカーSと言われる先進安全自動車を購入する高齢者に3万円を補助する施策も始まった。サポカーSとは、前方の障害物や人との衝突を予測して警報を鳴らし、その警報に運転手が反応できずにブレーキを踏まなかった場合に自動でブレーキがかかる衝突被害軽減ブレーキと、アクセルとブレーキの踏み間違いによる衝突のおそれがある場合に急発進や急加速を抑制するペダル踏み間違い時加速抑制装置の2つと、これらに加えて車線からはみ出しそうなときに警報音で知らせる車線逸脱警報、前方の車や障害物などを検知して自動でヘッドライトなどを切りかえる先進ライトの全てを搭載した先進安全サポート車のことであり、サポカーSやサポカーSワイドという言い方をしている。痛ましい交通事故を1件でも減らすため、本市でも全国の多くの自治体で始まった後づけできるペダル踏み間違い時の自動車の急発進防止装置の設置費用の助成や、先進安全運転サポート車などの購入助成についても検討してほしいと考えるが、所見を尋ねる。

◯市民局長 後づけの急発進防止装置や安全運転サポート車については、令和元年6月に内閣府から通知された未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策において、国による性能認定制度の創設や普及促進などが示されており、街頭キャンペーンなどにおいて有用性や代替を促すきっかけとなる自動車税減税等の周知を行うなど普及促進に努めていく。今後、国の動向を踏まえるとともに、他自治体の助成制度の効果なども注視しつつ、助成による支援の必要性も含め、普及促進策について総合的に検討していく。

◯高木委員 安全運転サポート車は身長が低い子どもや前を横切る車、悪天候時などには作動しないケースもあり、決して万全とは言えないが、痛ましい交通事故を1件でも減らすため、何とぞよろしくお願いする。最近、常磐道でのあおり運転殴打事件、あおり運転エアガン事件など、悪質きわまりないあおり運転が頻発している。警察庁によれば、道路交通法の車間距離保持義務違反であるあおり運転が昨年全国で7,625件、前年比の2倍にふえている。そして、運転中の映像を記録するドライブレコーダーがあおり運転の抑止力になるとされている。いわゆるあおり運転と言われる重大な交通事故につながる危険運転行為のうち、福岡県内での車間距離保持義務違反の過去2年の検挙件数を尋ねる。

◯市民局長 平成29年が418件、30年が814件となっている。

◯高木委員 一昨年に比べ、県内でもあおり運転の検挙件数が約2倍にふえている。この対策として市民のドライブレコーダー設置に対して補助を行う自治体もふえ始めた。9月議会での古川議員の提案に対し、本市の庁用自動車は車両更新時にドライブレコーダーを搭載するとの答弁をもらったが、市民を守るという観点から市民への普及促進も検討されたいが、所見を尋ねる。

◯市民局長 ドライブレコーダーについては、記録映像が交通事故原因の特定にもなることから、福岡県警や民間事業者などとも連携しながら、市民に対してあおり運転の注意喚起とあわせて、ドライブレコーダーの有用性の啓発を行うなど効果的な普及促進に努めていく。

◯高木委員 名古屋市では公用車1,510台のドライブレコーダーと市内4,000台の防犯カメラ映像を、事故や犯罪など必要に応じ愛知県警に提供する協定を締結し、対象車にはドライブレコーダー作動中のステッカーをつけている。尼崎市ではドライブレコーダー搭載の市民と市内事業者で見守り協力者を募集し、事件や事故が発生した場合、市が警察から情報提供を受け、登録した市民や事業者にメールで日時や場所を連絡し、該当する映像があれば警察に提供してもらう取り組みを始めている。また、独自に製作したウルトラ警備隊マークというステッカーを張ってもらうことで、車上荒らしやひったくりなどの犯罪抑止もつなげている。このような市や警察、市民や事業者も一体となった取り組みを本市でも検討してほしいと考えるが、所見を尋ねる。

◯市民局長 ドライブレコーダーや防犯カメラを活用した捜査協力などの取り組みについては、現在、自治会、町内会等が設置する本市助成の街頭防犯カメラについて、犯罪捜査のために警察から情報提供の依頼があった場合には、当該自治会、町内会等との調整を行うなどの支援を行っており、今後とも他の自治体の事例を参考にし、警察や市民とともに犯罪抑止や早期解決に向けたさらなる取り組みを検討していく。

◯高木委員 ことし5月、滋賀県大津市の交差点で右折車と衝突した直進車が歩道にいた散歩中の園児らの列に突っ込み16人が死傷するという、あってはならない事故も起きた。国は自治体に対し9月末までに保育園や幼稚園周辺道路の安全点検を要請している。この要請に対し本市はどう取り組んだのか、結果はどうであったのか尋ねる。

◯こども未来局長 保育園等の安全点検については、5月に各保育園長等に対して園外保育における危険箇所の有無の調査依頼を行っていたが、その後6月の国からの通知を踏まえ道路管理者及び地元警察署等の関係機関と連携し、保育施設が園外活動において日常的に利用している移動経路等について合同で点検を実施した。現在、その結果について集約、精査を行っている。

◯高木委員 できるだけ早く結果の公表をお願いする。政府は6月、大津市の要請で保育園や幼稚園周辺への車両進入を規制するキッズゾーンの導入を決定し、翌7月に大津市は現場から約2キロ離れた保育園近くを全国で初めて指定した。縦3.5メートル、横2.5メートルで緑色にカラー化し、白色でキッズゾーンと表示し平日午前7時半~8時は車両通行どめとした。まずは4園にモデル設置し、効果を検証しながら、本年度中に市内全153公立幼稚園に設置し、ドライバーに注意喚起をする。本年5月には、公明党福岡市議団も高島市長に宛て、保育施設、幼稚園等周辺の道路の交通安全対策に関する緊急申し入れを行い、危険箇所の点検やスクールゾーンに準じたキッズゾーンの設置などを要望した。園児の交通事故対策として、例えば周辺道路のカラー化などのキッズゾーン設置に向け検討してほしいと考えるが、所見を尋ねる。あわせて点検結果に基づいたスピード抑制対策、ハンプ設置、歩行者の防護柵、道路のカラー化など子どもたちの交通安全対策を進めてほしいと考えるが、所見を尋ねる。

◯こども未来局長 キッズゾーンについては、国において検討がなされているところであり、今後、国の動向を踏まえながら必要な対応を検討していく。

◯道路下水道局長 キッズゾーンについては、国の制度創設の検討状況を踏まえながら道路管理者として必要なハード対策について対応していく。また、9月末までに保育施設と道路管理者、交通管理者で行った合同点検の結果を踏まえ、保育園や幼稚園を所管する部局が10月末をめどに取りまとめる対策案について、交通管理者とも連携しながら園児の交通安全に向けた対策にしっかりと取り組み、安全、安心な歩行空間の確保に努めていく。

◯高木委員 現在、高齢者の特性に応じた限定条件つき免許も国で検討されているほか、これからはコミュニティバスやデマンド型乗り合いタクシーなど地域公共交通ネットワークのさらなる充実が求められ、免許返納者などが日々の買い物や通院に困らないまちづくりを真剣に進める必要もある。それと同時に、総合的な交通安全対策をさらに推進しなければならない。本市から痛ましい交通事故を1件でも減らし交通安全対策をさらに加速させるため、最後に高島市長の決意を尋ねる。

◯市長 高齢者がかかわる重大事故や幼い子どもたちが犠牲となる大変痛ましい事故が全国的にも相次いで起きており、高齢運転者対策、子どもの交通安全対策は大変重要な課題であると認識している。国の交通安全緊急対策を踏まえ、安全運転サポート車などの普及啓発、高齢者が交通事故を起こさないための安全運転の教育など、高齢者の安全運転を支える対策のさらなる推進を図るとともに、保育施設の園外活動における移動経路などの合同点検を踏まえた安全対策を推進していく。今後とも悲惨な交通事故から市民を守るために、地域や県警、関係団体などと連携を図りながら、ソフト、ハードの両面から対策に取り組むとともに、交通安全の確保に資する新しい技術なども積極的に取り入れていくなど、交通事故のない社会の実現を目指してしっかりと取り組んでいく。

◯高木委員 続いて、障害者手帳等保持者への配慮についてである。厚生労働省はことし4月1日から身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳のカード化を認める省令を交付した。療育手帳については既にカード化が可能だったが、身体、精神の手帳のカード化は初めて認められた。これに伴う会見では、障がい者の利便性の向上につながるよう発行主体の自治体はカード化に向けた検討を積極的に行ってほしいと対応を求めた。本人や家族が希望すれば紙製の手帳型を選択することも可能であり、カード化は義務ではないもののプラスチック素材でクレジットカードや運転免許証などと同じ財布に入るサイズで、表面は顔写真、本人基本情報、障害程度等級、運賃割引区分などを記載し、裏面は備考欄としている。本市での身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の平成30年度の交付数、10年前、20年前の推移と手帳発行に係る30年度の決算額を尋ねる。

◯保健福祉局長 交付数については、身体障害者手帳は平成10年度が3万5,285人、20年度が4万7,176人、30年度が5万1,979人、精神障害者保健福祉手帳は10年度が1,434人、20年度が6,115人、30年度が1万6,050人、療育手帳は10年度が5,047人、20年度が7,684人、30年度が1万2,035人となっている。障害者手帳発行に係る経費の30年度決算額については、105万円余となっている。

◯高木委員 手帳保持者総数は直近で約8万人と、20年前に比べ約2倍にふえている現状がわかった。そもそも障害者手帳を交付する目的は何か、障がい者がどんな場面で提示することになるのか尋ねる。

◯保健福祉局長 交付目的については、障がい者の自立と社会参加を促進することと認識している。障がい福祉サービスや各種手当などを申請する際、または公共交通機関や公共施設の利用料の割引を受ける際などに提示してもらっている。

◯高木委員 市民がよく利用する地下鉄、西鉄バス、電車、JRに障害者手帳を持つ人が割引を受けるために乗車する際にはどういう手順を踏むのか尋ねる。

◯保健福祉局長 地下鉄に乗車する場合は割引が適用される専用のはやかけんを障害者手帳を提示して購入する、券売機で割引乗車券を購入するなどの方法があるが、券売機では一部手帳の提示を求められることがある。西鉄電車、バスに乗車する場合はいずれも手帳の提示が必要になるが、割引が適用される専用のニモカを購入する、割引乗車券を券売機で購入する、バスをおりる際に割引運賃を支払うなどの方法がある。JRについては、手帳を提示してみどりの窓口で割引乗車券を購入するなどの方法がある。

◯高木委員 地下鉄、西鉄バス、電車は障がい者用の割引カードがあるが、JRにもぜひ協力依頼をするよう求めておく。本市は重度の障がいを持つ人などに福祉乗車券の一つとして交通用福祉ICカードを導入している。この福祉乗車券の交付を受けた人の件数、その中で交通用福祉ICカードを選択した人の平成29年度、30年度の件数と決算額を尋ねる。

◯保健福祉局長 交付件数については、制度変更を行った平成29年8月以降の実績で、平成29年度は1万9,001件、うち交通用福祉ICカードが7,974件、30年度は1万8,319件、うち交通用福祉ICカードが9,534件となっている。これらの事業に係る決算額については、平成29年度は制度変更前の事業費も含めて3億5,538万円余、30年度は2億6,573万円余となっている。

◯高木委員 交通用福祉ICカードは区役所の福祉・介護保険課などで助成金額をチャージしてもらわなければならないが、電車やバスの乗りおりの際に、このカードで改札機にタッチしても自動で障がい者割引にはならない。駅員がいる有人改札やバスの運転手にICカードを渡し障害者手帳を提示して割引してもらう必要がある。このため、療育手帳を持つ子どもや手や足が不自由な人、目が不自由な人などが手帳を提示する際に時間がかかってしまったり、まごついてしまうこともよくあると聞いている。有料道路の料金所で仕事をしている人からも、紙型の手帳は写真などが古くなったり、破損してぼろぼろになっている人も多く、提示を受けても割引のための本人確認がしづらいため、カード型にできないかとの相談を受けた。先月、既にカード化が可能であった療育手帳について、平成27年4月からカード型を導入し紙型と選択できるようにしている山口県から話を聞いてきた。山口県からもらったプラスチック製のカード型の療育手帳は1枚に写真や基本情報が載せてあり、クレジットカードや運転免許証と全く同サイズで財布に入るサイズになっている。全国に先駆けて療育手帳のカード化を導入した最大の理由は、紙型の手帳とは別に携行しやすいカード製手帳を交付してほしいという当事者団体による平成19年からの要望を踏まえたものだった。交付の状況は新規交付及び再交付申請者のうち、合わせて約4割がカード型手帳の交付を受けている。山口県ではカード型か紙型か選択してもらう際の基準として、おおむねカード型は再判定の必要のない人に便利であり、紙型は再判定の必要な人に便利としている。双方ともにメリットやデメリットはあるものの、カード型のメリットはやはり丈夫で汚れにくい、携行しやすいことを挙げていた。例えば、交通機関を利用するときだけでも障害者手帳がカード型であればケースに入れて首にかけておくこともできる。提示する際もカード型は丈夫で汚れにくい仕様になっている。これらのことから障害者手帳のカード化をできるだけ早期に実現できる方向で検討を進めてほしいと考えるが、所見を尋ねる。

◯保健福祉局長 現在の障害者手帳は障がいの等級や程度のほか、各種割引等を受けるための証明事項や居住地等の変更、手帳の再判定時期などの情報を必要に応じて記載できるようになっており、障がい者の自立や社会参加を促進する上でますます重要性が高まっている。カード化に際しては、現在の手帳と同等の記載スペースの確保が課題であり、行政手続の電子化が進められる中、さまざまな情報を連携させていくことも視野に入れる必要があると考えている。一方、障害者手帳は障がいのある人が日常的に携行するものであるため、汚れに強いことや持ち運びに便利なことも重要であり、障がいのある人の利便性向上の観点から今後カード化も含め障害者手帳のあり方を総合的に検討していきたいと考えている。

◯高木委員 障がい者にとって手帳提示は日常的なことであり、障がい者の立場に立って寄り添い、カード化を早期に実現することを重ねて要望しておく。東京オリンピック・パラリンピックに向け、国土交通省は障がい者の割引手続の簡素化を全国の交通各社に求め始めた。ICカードを改札にかざすだけで障がい者などが割引運賃で乗車できる仕組みを目指している。例えば、JR東日本のSuicaでは降車駅の窓口で手帳を提示しなければ割引を受けられない。国土交通省は、これまで交通事業者に通知してきた文書に障がい者割引を適用する際の本人確認の方法として、手帳の提示としていたが、ことし3月までにこの表記を全て削除し、障がい者の過大な負担にならない合理的な方法で行うよう障害者手帳の確認方法の見直しを促す通知を出している。地下鉄では、既に障害者手帳を提示せずに改札で自動的に割引運賃が適用される障がい者本人と介護者用の割引はやかけんがあるが、割引はやかけんを持っている人の人数を尋ねる。

◯交通事業管理者 導入された平成21年3月以降、これまでに発行した枚数から既に解約された枚数を除いた枚数は、令和元年9月2日現在で1万639枚となっている。

◯高木委員 割引はやかけんは障がい者にとって大変便利なものであり、さらに周知を図ってほしいと思う。地下鉄では、その都度切符を購入する障がい者に対しても全国に先駆け、基本的には手帳の提示を求めず障がい者割引で乗ってもらう対応もできている。その一方で、美術館、博物館、アジア美術館などでは手帳の提示が必要で、障がい者団体から手帳提示の緩和を求める要望を聞いた。具体的には、旅行代理店を通じて入場予約をしたが、その代理店からは必ず本人が手帳の原本を提示するように言われたそうである。本市の美術館、博物館、アジア美術館などで、例えば入場の際に当事者団体や旅行代理店などから事前予約があれば提示不要にしたり、入場時に代表者が署名すれば提示を省略したり、手帳のコピー提示でも可能にするなど職員にも再度徹底してもらい、合理的な方法で対応してほしいと思うが、所見を尋ねる。

◯経済観光文化局長 美術館、アジア美術館、博物館における障害者手帳等の提示については、手帳のコピーや団体の場合には名簿等により確認ができれば障がい者に観覧してもらっており、手帳を忘れた場合にも次回の持参を依頼するなど既に柔軟な対応をしている。指摘があった事案も含め、今後とも障がい者の負担にならないよう対応を検討し、従事職員にも徹底していく。

◯高木委員 3館だけでなく、本市の各局が所管する入場料がかかる施設においても手帳提示を省略する合理的な配慮の徹底をぜひよろしくお願いする。視覚障がい者からの相談があった。地下鉄で券売機を利用する際にタッチパネルになってから点字がないために購入しにくくなった、乗りおりする際に駅員がいる改札口で障害者手帳を提示する必要があるが、点字ブロックは自動改札に案内するようになっており、駅員がいる改札口まで点字ブロックで誘導してほしいというものである。いつも使う駅であれば有人改札の位置関係もわかるが、余り使わない駅や例えば天神駅など改札が幾つもある場合に困るというものである。何か対処ができないか尋ねる。

◯交通事業管理者 券売機の点字表示の実情については、券売機にはタッチパネルとあわせて点字表示つきの運賃入力用テンキーを設置しており、テンキーの使用の際には音声案内が流れる仕組みとなっている。利用方法が不明な場合などに駅係員の呼び出しを行うためのボタンを備え、これにも点字表示を施している。視覚障がい者誘導用ブロックについては、有人改札に直近の自動改札機へ誘導するよう設置している。これは、視覚障がい者の中には自動改札機の利用が可能な人も多数おり、こうした人が健常者と同様に改札機を通過できるよう配慮するとともに、自動改札機の利用が難しいと認められる人については、駅係員が積極的に声かけをし、有人改札において適切な対応を図ることとしている。交通局としては、障がいのある人にとって、より使いやすい地下鉄となるよう努めていきたいと考えている。もらった意見については、今後さらなる改善を図っていく上での参考にしたい。

◯高木委員 本年6月、福岡令和会、自民党新福岡、公明党福岡市議団の代表から高島市長に宛て、令和2年9月までの経過措置となっている福祉乗車証、地下鉄無料パスの継続を求める要望書を提出した。高島市長からはこれからも使ってもらえるよう制度を検討するとの話をもらった。その後の検討内容について尋ねる。

◯保健福祉局長 福祉乗車証については、重度障がいのある人が経過措置終了後も現在の福祉乗車証を継続して利用できるよう具体的な検討を行っているところである。

◯高木委員 来年9月となっている経過措置を見据え、よろしくお願いする。いち早く国の基準を取り入れた東京都は、宿泊施設の一般客室にも段差解消などを義務づける建築物バリアフリー条例の改正を行い、努力義務ではあるが、ことし9月以降に新築や増改築する1,000平米以上の宿泊施設では電動車椅子でも快適に移動ができるように客室入口を80センチ以上にすること、浴室の出入り口幅を70センチから75センチに、浴室やトイレへの通路も100センチ以上にすることなどを定めた。本市でも多くの宿泊施設の建設も予定されていると聞いているので、ぜひ事業者にも協力をお願いし建築物バリアフリーを進めてほしいと考えるが、所見を尋ねる。

◯保健福祉局長 本市においてはバリアフリー法の改正などを踏まえ、令和元年9月に福祉のまちづくり条例施行規則を改正し、車椅子使用者が円滑に利用できる客室の整備数に係る基準の引き上げを行っている。議員から紹介のあったホテル等の客室の基準を含め、さまざまな設備のバリアフリー化については、学識経験者や専門家、障がい者、高齢者などの当事者の意見も聞きながら施設の整備基準を定めた福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルの改訂を進めている。

◯高木委員 平成25年6月議会でヘルプカードを本市で導入することを提案し、公明党福岡市議団は毎年の予算要望などでも求めてきた。ようやく、ことし5月から福岡市版ヘルプカードを作成し、各区役所の福祉・介護保険課などで配布が始まったところである。福岡市版のヘルプカードは「あなたの支援が必要です、ヘルプカード、福岡市」と、ヘルプマークが入っており、裏面には例えば、自分は耳が不自由とか、足が不自由というような「私が手伝ってほしいこと」を書けるカードになっている。今は希望すれば透明なケースと短いチェーンを各課の窓口で配布しているそうなので、ぜひ職員から取りに来た人に要りませんかと声かけてもらい、活用を図ってもらうようお願いしたい。平成29年7月20日、経済産業省は2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、JIS案内用図記号を改正し、ヘルプマークを追加している。これは不特定多数が出入りする施設で、目で見るだけで案内を可能とする図記号である。ヘルプマークの対象者は、障がい、病気、妊娠中など外見上ではわかりにくいものの援助を必要とする可能性がある人、災害時に的確な状況把握ができにくい人などが挙げられる。先日、若年性パーキンソン病という難病の人から相談があり話を聞いた。見た目には全くわからないが、じっとしているときに震える、膝や指などの筋肉が固まり動かしにくいなどの症状が起こる場合がある。その人はいつもヘルプカードを身につけているが、このように言われた。「私は、このマークをつけている人に電車で席を譲ってほしいと訴えたいわけではありません。ただ、ちょっと気にかけてほしいだけです。し、ぐあいが悪そうだったり、しばらく動かなかったらちょっと声をかけてくれると嬉しいです。もしかしたら、今動けずに固まってしまい、あなたに現状を伝えることができないかもしれません。そのときはお手数ですが、次の場所に連絡をとっていただけませんか。申しわけございませんが、よろしくおねがいします」というものである。このヘルプカードの裏面に病院のドクターの名前と連絡先が書かれている。ヘルプカードのことを理解する市民を一人でも多くふやすことが重要であり、地下鉄車内の優先席などにヘルプカードの表示を行うことや、地下鉄駅の改札でも希望者に配布すること、他の交通事業者への協力依頼などぜひ検討してほしいと考えるが、所見を尋ねる。

◯交通事業管理者 ヘルプカードのさらなる周知については、交通局としても地下鉄車内の優先席への表示や駅窓口でのヘルプカードの配布などについて協力していきたいと考えている。

◯保健福祉局長 交通局以外の交通事業者に対しても、さまざまな機会を捉えヘルプカードの配布や周知などの協力を依頼していく。

◯高木委員 公明党は、障害者手帳のカード化によって障がい者の心のバリアが除かれるとともに、さらにマイナンバーカードとの連携も視野に入れることにより、飛躍的に利便性が高まる社会の形成にも通じると主張しており、全く同感である。厚生労働省は、カード化への背景はマイナンバー制度の導入により、自治体において必要な情報を効率的に取得できる環境が整いつつあること挙げている。福岡市基本計画の目標の一つである「一人ひとりが心豊かに暮らし、元気に輝いている」まちへ向けて、本市の先進的なIT技術を駆使した障害者手帳のカード化など、障がい者の心のバリアを除いていく施策をさらに進めてほしいと考える。最後に、ユニバーサルデザインの理念による本市を築くための高島市長の所信を尋ねる。

◯市長 本市では平成31年1月に障がい者差別解消条例を施行して、障がいのある人もない人も相互に人格と個性を尊重し合いながら共に生きるまちづくりを進めている。ICTを駆使して障害者手帳をカード化するなど、ハード、ソフトの両面から社会的な障壁を取り除いていくことは障がいのある人の社会参加を促進する上でも大変重要であると考えている。今後とも「みんながやさしい、みんなにやさしいユニバーサル都市・福岡」の実現に向け、障がいの有無にかかわらず全ての人にとって暮らしやすいまちとなるようにしっかりと取り組んでいく。

 

議員紹介

  1. つつみ 健太郎

    西 区

    つつみ 健太郎
  2. たばる 香代子

    中央区

    たばる 香代子
  3. たのかしら 知行

    博多区

    たのかしら 知行
  4. 石本 優子

    早良区

    石本 優子
  5. かつやま 信吾

    東 区

    かつやま 信吾
  6. 古川 きよふみ

    博多区

    古川 きよふみ
  7. 高木 勝利

    早良区

    高木 勝利
  8. しのはら 達也

    城南区

    しのはら 達也
  9. 尾花 康広

    東 区

    尾花 康広
  10. 松野 たかし

    南 区

    松野 たかし
  11. 山口 つよし

    東 区

    山口 つよし
  12. 大石 しゅうじ

    南 区

    大石 しゅうじ
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